冬の議会ご報告
年末年始の動き & 新任期開始で重要なこと
こんにちは、上尾市議 尾花あきひとです。
1期目最後となる年末の定例会、そして1月1日から始まった2期目の任期。
年末年始の議会の動きについてご報告致します。
百条委員会の調査結果
昨年 浮上した疑惑「2018年度に 上尾市が元市長私有ブロック塀を公費で修理していた問題」に対して 市議会が百条委員会を設置し行ってきた調査は、年末の本会議までに最終報告書案を作成。
小林守利氏・新井金作氏を除いたうえで(関係者は除く仕組み)採決を行い、全会一致をもって議会の調査報告が確定しました。
小敷谷地内フェンスブロック擁壁 撤去・新設工事の経緯に関する調査特別委員会報告書[PDFファイル]
事件の経緯と、再発防止策等の提言を含む内容となっています。
最終報告書案を全会一致で可決
市長・元市長・元議長を告発へ
この調査過程で行われた証人喚問での言動に関し、地方自治法違反の容疑で 下記3件の刑事告発を決定しました。
◆新井 元市長・・・「畠山市長に電話をしていない」と述べたが、畠山市長の携帯電話に新井元市長からの留守電が残っており 虚偽の証言と判断。
◆畠山 現市長・・・新井元市長・小林元議長との会食があったとされる店名や支払いについて証言を拒絶した事。
◆小林 元議長・・・提出した工事請求書の日付が「令和1年3月」、領収書に「R1年4月」とあり、改元前の日付に「令和」と記載されていた事から文書の偽造と判断。
改めて解説しますと、「百条委員会」とは 議会側が市の事務を調べる方法のうち 極めて強い調査権を持つものです。
調査対象者を出頭させ 証言・記録提出を求めた際 正当な理由なく拒否はできず 反した場合には「6ヶ月以下の禁固 または10万円以下の罰金」、証言の際には「嘘をつかない」と宣誓させ 虚偽を述べた場合は「3ヶ月以上5年以下の懲役」の刑事罰が定められています。
これらは「刑事罰の制裁ルールのもと 対象者に真実を語らせる事」に本来の意義があるものですが、今回の調査の中では上記3件が刑事罰にあたる行為と判断し、市議会として告発を決定しました。
なお、実際の証人喚問時の様子は、調査報告書の確定時点をもって動画公開されております。
🎬 10月24日 証人喚問「新井弘治 元市長・当時の課長・次長・部長」(上尾市議会スマート中継)
🎬 10月25日 証人喚問「新井金作 議員・美創建業社長・小林守利 元議長・畠山稔 市長」(上尾市議会スマート中継)
これら刑事告発までの経緯に関して、一部報道では
「百条委は当初、新井元市長が現在は民間人で、高齢という点や畠山市長を告発しても不受理になる可能性が高い点などを考慮し、告発を見送るべきとの意見が有力だった。
しかし、問題をめぐり、市民から厳しい批判の声が上がったため、最終的に全委員が告発に傾いたとみられる」(産経新聞 12/7付)
といったものがありましたが、報道を見て非常に驚きました。
この委員会内での「告発を見送るべき」との意見は 一部議員が会派にもはからず個人発言で行ったものです。
そもそも百条調査権について規定されている自治法第100条では、対象行為があった場合に 議会は「告発しなければならない」と明記されています。
百条委員会を設置した時点で 上記理由による見送り判断自体ありえないものですし、理由も全くもって意味不明です。
市民からの批判の声があったとの事ですが 当然の声ですし、私のほか数名からも条文について再三説明のうえ、発言に対して抗議しておきました。
議会側の調査で はじめて明らかになったこと
昨年6月に浮上した本疑惑に対し、市側は独自調査結果を9月直前に議会へ報告しています。
この報告書、「小林氏と職員のやりとり」の詳細が記載された一方、新井氏と畠山市長とのやりとりについては概要に留まる等、不完全さを感じるものでした。(一般質問にて指摘済み)
市は「強制力を持たない制約で聞き取りした」「より力のある百条委員会で新たな事実が出れば認める」との見解を示しながらも監督責任明確化とうたって「市長・副市長の給与を数ヶ月 減額する案」を議会に提出。
しかし議会側は「真相はまだ全て明らかになっていない」として否決し、百条委員会にて調査を続けて現在に至っています。
そして、議会側の調査の結果、市側調査では判明していない事実が浮上する事となりました。
「工事費693万3,600円の中には 付帯して行われた道路付近のマス工事があり、この部分だけは『市費で実施する通常工事』だった。」
つまり、問題がある工事費内の 一部分のみが「市で通常通り実施すべき工事」だったため、市が 新井氏からの「693万3,600円 返還」を全額受領してはいけなかった事が明らかとなりました。
実施した工事内容を担当課が把握していない事がありえるのか?
それとも、工事内容すら確認せずに 返還金受領の話が何故か即決定されたのか?
という疑問が生じました。
付近の集水升工事が工事費内に含まれていた
常識的な手続きでは、市側は新井氏からの返還意向の金額を即受領するのではなく、「供託」という形を取って一次預かりとし、詳細チェックをすべきでした。
それをなぜか即受領し 事態収拾ととられかねない調査終了報告をしたわけですが、議会側が独自に百条委員会を立ち上げて本件調査をした結果、はじめて この返還金処理の間違いが判明した形です。
指摘を受けた上尾市は、差額分12万5,407円を新井氏に返還処理したとの事です。
仮に遅延損害が発生した場合には税金から支出される可能性さえありましたが、市側いわく「新井氏は納得して受領したため遅延金は発生しなかった」との事。
不適正支出の案件にも関わらず中身をしっかりチェックしなかった事は理解しがたいですし、市側の対応は 全体として事態収束を図っていると言われかねないと思います。
本件工事の意思決定の責任所在について、市側は「工事発注については現場の独断で意思決定が行われ、それを察知できなかった部分に市長の責任がある」との形で語ってきました。
「9月時点での給与減額(案)」や「上司に報告する仕組みを徹底させる職員倫理条例(案)」についても、「現場の問題であり、上司に報告が徹底できていればこの問題は起きなかった」という視点が常に主張されているように思います。
市長は証人喚問で、新井氏や小林氏との会合の際「ブロック塀の依頼に対しては拒否し、この話は終結したと認識していた。現場が勝手にやっているとは思わなかった」旨の答弁をしていましたが、少しでも議員を経験した者であれば、「市への陳情ルートとして 先に担当課にも話が行っているのでは」という予測が出来ると思います。
なぜそこに思い至らなかったのか?断った時点で、担当課と本件に関するやりとりが無かった事に関しては、いまだ疑問が残ります。
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年末議会での各問題
その他、年末の議会では、過日のブログにて紹介した「丸山公園釣り禁止方針の問題」のほか、
「上尾駅前の放置自転車撤去が充分な説明なく突如始まった」との市民からの声、
「平方幼稚園閉園議案の前に 議会や通園者へ充分な説明を」として議案が否決となった等、
市政運営の課題が改めて浮き彫りになってきた印象があります。
また、12/17の新聞報道で「10/12の台風19号直撃の際、上尾市が被害の全容を把握しないまま、翌日に災害対策本部を解散し、態勢を縮小していた」と報道されました。
これを受けた市側は議会への説明の場を開き「報道内容に誤りがある」との説明を行いました。
そこで、私から「仮に誤報であれば報道機関に対して明確に抗議を行い、市民に対しても適正な事務を行っていた旨を情報発信すべきでは」と指摘したところ、市側は「市長・副市長と相談し対応する」と回答。
しかし現時点で報道機関に対する抗議を行ったとの報告は一切ありません。
議会に対して「誤報である」と報告した以上、対外的にも責任をもって発信を行うべきと思いますが、何故か明確な対応が取られていません。
市側は百条委員会の調査結果をふまえ、新年度に向けて これまでに否決された「職員倫理条例案」や「市長・副市長の減給案」といった議案を再度、上程準備に入ると思われます。
しかし、上尾市政の抱える問題解決には、汚職防止策や「悪い議員からの働きかけを断る」といった事のみならず、「情報開示を行い より広く市民の意見を聞いて自治体運営をする」という基本姿勢の見直しが必要です。
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2期目開始にあたって重要な事とは
引き続き2期目に臨むにあたり、重要な事は「2元代表制(※)」の徹底、市議会の機能回復です。
これは私個人の考えですが、自治体議会は 市政へのチェック・提案を行い 市民生活を具体的に変化させる事が出来なければ そもそも存在意義がありません。
(※)・・・住民を代表する独立機関である市長と議会が緊張関係を保ちながらチェックと提案をする仕組み
「税→住民サービス」還元の質を上げないと生活の現場は変化しない
市長・議長逮捕後の上尾市議会は、議員同士の批判構造が強まり 内部対立が加速した結果、本分である市政のチェックが甘くなった瞬間がありました。
私は市政への各種提案を軸に4年間活動する中で 同時に、初出馬時に訴えたように 上尾の政治界隈の数十年来の悪癖「他者批判中心」の是正をもう一つのテーマとしています。
(不正糾弾は 当然の話です)
議会改革や総務委員長としての動きでは、会派を越え丁寧に意見聴取するよう努めてきましたし、百条委員会立ち上げ後は 議会全体としても 壁を越えた議論の場面は増えたように思います。
良識ある議員同士では建設的な意見交換が出来たと思っており、年末には会派問わずこういった感想が聞こえたため、最終局面にきて 改善へ一歩踏み出せた手応えがありました。
百条委員会設置下という特殊な状況ではありますが、この数ヶ月間の市議会の動きを 各議員さんには決して忘れて欲しくないと思います。
改選により議会内の構造がどう変化しても「市民生活を具体的に向上させる」ため、議会はブレる事なく力を注ぐべきです。
政治家を選ぶ制度は「有権者から見た 候補者の『相対評価』」(よりリスクの少ない方を選択する)ともいえますが、一方で候補者側(=ビジョンを示し評価してもらう側)は 相対評価の意識だけではいけません。
候補者側の動機が「あの政治家よりは自分の方がマシ」というものである限り 上尾の政治風土の根本問題は解消できないのではないかと、私は思っています。
それが安易な批判構造を生む原因ですし、何よりも目を光らせるべき行政組織から目が逸れ、自治体が官主導になりかねません。
行政組織の体質改善が出来なければ、市民生活は向上しません。
これは思想の左右や在籍年数に関わらず、各議員が今一度考えなくてはならない事です。
他の議員や議会内に対してばかりではなく「自分が上尾にどう向き合うか」で各人の真価が問われると思います。
対立ばかりの構図にならないよう、この4年の経験を伝える事が自分の役目の1つであると思っていますし、会派内外問わず意見を聞き、行政と向き合いながら 正常な自治体運営に向けて努めたいと思います。
大変多くの学びを得た4年間、この任期を与えていただいた市民の皆様に心から感謝を申し上げます。2期目にあたっても引き続き、皆様のご指導・ご意見を よろしくお願いいたします!