秋の議会ご報告② なぜ市長・副市長の減給(案)は 否決となったか
こんにちは、上尾市議 尾花あきひとです。
秋の議会ご報告の続きです。
【1】6月議会では採決見送りとなった「職員倫理条例案」は、閉会中審査ののち9月議会で採決へ。結果は・・・全議員が反対して否決 → 先日のブログへ
【2】6月に浮上した「小敷谷フェンスブロック工事 公金不正支出」疑惑に関し、市は9月議会直前に調査結果を議会に報告。責任を取るとして「市長・副市長の給与減額案」を提案したが、議会側は「真相はまだ全て明らかになっていない」として否決
【3】百条調査「証人喚問者リスト」が決定。市側が調査報告を出したとしても、議会側は百条委員会にて真相究明を続けていく
本日は、【2】についてご説明いたします。
採決は委員会を経て「本会議」で確定する
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【2】6月に浮上した「小敷谷フェンスブロック工事 公金不正支出」疑惑に関し、市は9月議会直前に調査結果を議会に報告。責任を取るとして「市長・副市長の給与減額案」を提案したが、議会側は「真相はまだ全て明らかになっていない」として否決
「小敷谷地内ブロック等工事」疑惑の浮上に対し、市側・議会側ほか 様々な対応がありました。
<時系列順>
・市は「関係者に聞き取り調査中。9月議会を目処に報告する」と述べる(6月)
・市民から「公金不正支出」について住民監査請求(※)が出される(7月1日)
(※事務に違法・不当性が疑われるとき、住民が、独立機関である監査委員に監査を求め 措置を請求できる制度)
・新井元市長から「問題の早期収束のため」工事費693万3,600円を支払う意思が示され、市は「返還金」として受領(7月19日)
・議会は強い調査権を持つ『百条委員会』を46年ぶりに設置し 調査開始(8月)
これらを経て9月議会が近づく8月23日、市から調査結果の報告が。
前々日の夕刻に突如 議員に召集がかかり、全員協議会が開催。
住民監査請求の結果が出る前に、市側が内部調査の結果を発表する形になりました。
上尾市ブロック設置問題に係る調査委員会調査報告書の概要(上尾市公式ウェブサイト)
市が作成した概要図
議員側からの質疑において 「(新井元市長からの費用返還について)市はなぜ受領したのか?事態の収束を図ったように解されるものを 受け取るべきではなかったのでは?」と問いがありましたが、
市は「地権者は『市の財産により自身の利得を得た』ため 市に返還すべき。民法703条により『不当利得返還金』として受領した」と答弁。
弁護士見解を根拠に『受領の法的理由』を述べるのみに留まりました。
(上尾市は「市側から地権者に返済を依頼した事は一切無い」と強調)
この報告書、聞き取り結果として「小林氏と職員のやりとり」の詳細が記載された一方、新井氏と畠山市長との数回あったとされるやりとりについては概要に留まり中身が記載されていない等、不完全さを感じました。
市はこの調査について、あくまでも
「強制力を持たない制約で聞き取りした」
「より力のある百条委員会で新たな事実が出れば認める」との見解を示しつつも、監督責任明確化のためとして「市長・副市長の給与を数ヶ月 減額する案」を9月議会に提案すると発表。
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この数日後の8/29、監査委員から住民監査請求の結果が発表されました。
小敷谷地内ブロック塀等の工事費用の返還に係る監査請求(結果)
構造上、市から独立した機関である監査委員による結果は—
「畠山市長と関係職員は、工事費支出時から 新井氏が費用返還するまでに生じた遅延損害金69,810 円を上尾市に返還すべし(一ヶ月以内)」という勧告でした。
市民からの元々の請求内容は「畠山市長と職員は工事費693万3,600円全額を上尾市に返納すべき」というものでしたが、新井氏からの返還金を市が受領したためもあり「市長と職員は 金利相当額を返還せよ」との勧告になった形です。
あわせて監査委員からの見解として、
・市負担する必要がない工事であり 一部の者の利益のための公費支出は認められない
・(工事額を細分化する事で競争入札を回避し 特定業者に受注させるために)工事を意図的に数本に分割しており 違法性は明らか
・発注決定までの記録が存在せず、事情聴取でも関係者の主張に食い違いが散見された。監査・責任所在・市民への説明責任において憂慮すべき事態
・市長が「公正・公平」を掲げ職員倫理を推進する中で 違法行為により市に損害が発生した事は 信頼を損ねるもので非常に遺憾。再発防止を求める
といった意見が示されましたが、新聞報道によると畠山市長は 監査結果に対し、
「損害を返還すべき関係職員の範囲が不明」
「違法行為を阻止する事を怠った として市長に賠償責任が負わされているが その根拠となる事実が不明」
と異議をコメントしたとの事です。
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そしていよいよ9月議会が開会となり、「市長・副市長の給与減額案」は私たち総務常任委員会に付託され審査がスタート。
審査中の質疑では、
問「減給率の積算理由は?」
答「上尾での過去の例(著作権侵害、保育所での死亡事件)や、熊本市・朝倉市の例(公金不正支出、現金着服事件)を参考に、市長・副市長それぞれが3ヶ月・2ヶ月、10%ずつ減額する事とした」
問「計42万円減給の計算になるが、これが妥当という認識なのか」
市「現時点ではこの程度が妥当と考え、覚悟をもって条例として提案している」
問「責任に関する考えは」
市「損害賠償責任は故意や過失で与えた場合に発生すると考えているが、市調査報告では当時の職員2名に賠償責任があるとしている。市長については、新井元市長や小林議員から会合で本件の要望があったとしているが、それをもって幹部職員の行動まで予見は困難と考え、賠償責任があるとまでは言えないと考える」
問「(市の調査委員会よりも強力な)百条委員会を 議会は全会一致で設置し調査中である。その結果を待つのが普通と考えるが、減給案をこの時点で提案した理由は?」
市「早急に再発防止を進める中で、組織として 責任所在を明らかにすることが不可欠と考えた」
尾花「減給率算出に関しては『他市を調べ参考にした』と述べられたが、では それら他市において『同質の議案(減給により責任を取るもの)を提案した時に、議会側が百条委員会を立ち上げ調査の最中であったケース』はあったか?」
市「把握をしていない」
・・・といった質疑ののち討論に入り、各議員からは、
◆調査報告時や、監査に対するコメントでは、市長が他人事のように捉えているように感じる。『覚悟をもって提出』と述べた条例がこの程度の内容である事は、早期幕引きを図ろうとしているようにさえ思う」
◆百条委員会が立ち上がっている状況を踏まえた上で監督責任を果たすべきで、時期尚早」
◆現場職員の処分もまだ決まっておらず、『百条での協議を注視しながら懲戒審査委員会を作り審査する』とされている。市長・副市長責任については 現段階で本当にこれが適当か判断できる状況ではない。百条の報告を待ち、市長・副市長の処分を関係職員と同時にとるべき。
◆皆さんと同意見の部分もあるが、現時点での提案については、百条で新事実が明らかになった際には改めて検討するよう受け止め、条件つきだが賛成
と討論があったのち、結果は反対多数で否決となりました。
「百条委員会を全会一致で立ち上げ調査の最中である」という事は、議会側は一致して「本件はまだ結論が出ていない状態」と言っているのと同義と思います。
なぜ、百条調査の結果を待たずに 給与減額案を提案したのかは疑問です。
これを受けた 本会議での最終決定では「 27人中23人が反対」し、否決が確定。
職員倫理条例(案)とあわせ、市提出の大きな議案が2本ともに否決という結果になりました。
(【3】の報告は別記事につづきます)