「財政調整基金」(市の貯金)と
国からのコロナ対応臨時交付金の入金について
こんにちは、上尾市議 尾花あきひとです。
上尾市はコロナ影響への対策支援事業の財源として、国からの「新型コロナウイルス感染症対応 地方創生臨時交付金」による実質的な補填を前提に 市の貯金「財政調整基金」を取り崩して事業を実施しています。
国からの入金状況について 改めて私から担当課にヒアリングしたところ、「先週をもって まず最初の約4.7億円分は入金された」と報告を受けました。
(後述の財政状況ゆえ「問い合わせ前に議会報告すべきでは」と伝えておきました)
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上尾市 これまでの新型コロナウイルスに係る支援事業一覧(第1弾・第2弾・第3弾)
7月の最終週は 各市区町村の議会で臨時議会が開かれ コロナ対策事業の追加展開が議題となっていたようです。
上尾市の場合、「6月12日に成立した 国の第2次補正予算(※)を受けての 市の追加支援策」は、市議会6月定例会中に追加議案として提案(上記リンク先「第3弾」の事業)されたため 日程を数日延長し審査、6月末をもって既に可決となっています。
(※) 国の第2次補正予算・・・コロナ対策を柱とし 市町村ごとの独自策に充てられる交付金枠も示された。上尾市の枠は2次補正までで17.7億円の限度額が示されている
これらの施策は「市独自策」と銘打たれてはいますが コロナ対策については 国からの交付金を充てられる対象が幅広く設定されており、上尾市側も不急事業削減や繰越金等により独自財源を確保しつつも 多くの部分に対しては 国からの交付金で実質補填する予定であると議会に対して説明されています。
新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金~脱コロナに向けた協生支援金~[内閣府地方創生推進室]
上尾市によるコロナ対策事業の流れを少しさかのぼると、初動として4・5月頃に打ち出されたもの(第1弾・第2弾部分)については 施策が他市より遅いとの指摘もあり、市は実施にあたって 臨時議会に提案し審査にはかるのでなく「専決処分 (事業実施後に議会は事後審査する形)」で実行しました。
この理由は「急ぐ必要があった」と述べられましたが、「他市では臨時議会を経てもっと早い対応をしているところがたくさんある」事をこちらから指摘しています。
(なお「コロナ禍での専決処分判断の是非」については法の規定 「特に緊急を要するため 議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき」の解釈について、一般質問で問題提起しました。
専決で実施した事業は 仮に後からの議決で否決となっても既に費用が出てしまっており基本的に費用回収は不可能。
「施策展開の遅れ」と「そこからの早期実施」だけの理由で専決できてしまえば 極論 恣意的に実質 議会の議決を回避できる恐れがあるためです。
→ 【動画】上尾市議会 6月定例会一般質問 [17:30〜21:24] )
この背景には、他市に遅れをとっている危機感もあったのではないかと思います。
タイミング見極めの難しさも理解はしますが、懸念された点が「財政調整基金」の状況でした。
財政調整基金とは? |
上尾市は「専決処分」で実施した事業と6月追加事業を 国からの交付を待たずして立て続けに実施したため、いわば「立て替え」的に「財政調整基金」を取り崩し、予算としては一時的に全額を使い切ってしまう計画となりました。
審査時に確認したところ、質疑に対する市の回答は以下のものです。
問「本補正は『本市独自事業を実施するため』との説明だが、市が自ら身を切る財源はあるか。歳入のうち『財政調整基金残高 全額取り崩し』とあるが、のちに『新型コロナウイルス対応 地方創生臨時交付金』による充当を見越した予算計画であるか。市負担割合については現段階でどう見立てているか。ここまでの本市コロナウイルス事業に対する国からの交付は既に成されたか。本補正を行った際には、一次的に『財政調整基金 0円』の状態が発生するという理解でよろしいか。」 答「財政調整基金残高 全額を取り崩すこととしているが、これは地方創生臨時交付金の交付額が現時点では確定していない事から 一次的に各事業の財源を同基金から 繰入金などに賄う事としたもの。実際には、本市の新型コロナウイルス感染症対策について既に実施している事業も含めて地方創生臨時交付金など、国からの財政支援を活用する事が可能であり、実質的な市の財政負担はほぼ生じないと考えている。 問「実際の交付はまだとの事であり また一次的に財政調整基金0円の状態が発生するとの事だが 本日未明4時47分ごろ 千葉県東方沖を震源とする地震が発生している。災害等の緊急対応が発生した場合、本市としてはどう対応するか」 答「予算ベースの財政調整基金の残高は一次的に0円となるが、災害等、緊急事態が発生した場合には 災害対策基金・前年度からの繰り越し金・災害復旧事業債・一時借入金等、財源を活用して対応する事としている」 |
こういったやりとりを経たのちの「先週をもって まず最初の約4.7億円分は入金された」との担当課からの回答でした。
コロナ禍において「財政調整基金取り崩し」の話題は全国的に報道されています。
コロナで「貯金」減 自治体の財政状況まとめ読み 2020/6/29 日本経済新聞
自治体財政 コロナと災害への準備整えよ 2020/07/22 読売新聞
緊急時には あらゆる組織や資源において「平時からの 運用が適切であったか」が可視化されます。
毎年度の予算編成において財政調整基金取り崩しが常態化していますが、一定以上の金額を積んでおく重要性が 大きな課題として再認識されるところです。
また、自治体予算書のみの視点では 国からの交付金を「自由に使える財源」と認識する危険がありますが 交付金も当然、血税。
施策が 安易なバラマキとならぬよう、議会として効果をしっかり確認・検討して審査に臨む必要があります。
コロナ禍は長期化を前提に対応すべきです。
危機状況で陥りがちな事として、支出の訴えの一方で 財源の議論が ないがしろにされる事のないよう 努めてまいります。