「議員間討議」試行へ 〜議会改革の動き〜
こんにちは、上尾市議 尾花あきひとです。
上尾市議会では、議会改革の一環として 新たに「議員間討議」を試行する事となりました。
「議員間討議」の仕組み
私が委員長を務める 議会改革特別委員会で検討を行ってきたものです。
これまで「市が提出する予算・条例案等の各種議案を議会が審査する」際の流れはー
「質疑 ➡︎ 討論(議員の賛成/反対の理由表明) ➡︎ 採決」という「市側に対するアクション」を主な形としていましたが、
ここに今回「議員間討議」を試験導入することで、「議題に関して 議員"同士"が討議する」事が可能となります。
(※しばらく試験的に運用した後、正式導入の判断を行うことになります)
試行ルール
目的:論点を整理し 合意点を模索する。討議を公開して説明責任を果たす。
対象会議:常任委員会で 議案審査や 事務調査時に実施。
申出:希望する委員は 申出書を提出。
申出は1名から可能とするが、「討議」の性質上 申出者の他に委員1名以上の賛成があった場合を開始条件とする。
(会議中に論点が生まれる可能性も想定し 現場口頭での希望も可)。
実施方法:質疑終結後のタイミングに行う、1議題当たり30分以内を原則とする、市執行部側も原則 同席する 等。
主な導入意義は「議論が深まり 議員の考えが可視化されやすい」点にありますが、
更に大きな視点では「政策決定が どんなメリット/デメリットを生むか を 住民と意識共有できる」点に真価があると考えます。
導入の意義①
議論の深化と可視化
上尾市議会は、前回(2019年末)改選を経て 早々に「議員の政治倫理条例の制定※」を行ないました。
この際に 私が意識した点が「ポジショントークではない各論の議論」です。
(※市長および職員の倫理条例は 別途 市役所側から提案され 制定)
改選直前の時期は、汚職事件や公金不正支出等のショックにより 議員間の対立傾向が強まる中で 「この意見は この会派が出しているものだから」といった観点での議論の停滞が散見され、同時に そちらに引っ張られた結果 執行部に対するチェック機能が低下した傾向も見られました。
これら問題点をふまえ、改選を経た後の政倫条例の協議にあたっては、
「会派の意見は持ち寄りつつも 委員会の現場では『どの会派の意見』という事ではなく『 純粋に 各条文を盛り込む事で生じる メリット/デメリット』を全員で共有してから 最適な決定を下せるよう 合意点を探る」考え方で 取り組んできました。
この進め方には 改選後には会派を問わず同意頂ける議員が多かった事もあって、上尾市議会で過去 一度頓挫したといわれる当該条例について 今任期の議会では 制定に至る事ができました。
こ頃から、上尾市議会は「発言者が誰か」というレベルの議論から大幅に脱却し、現在は「会派を超えて各論の議論が可能な議会」に近づいていると思います。
この「ポジショントークではない各論の議論」を 市が提出する議案等の審査においても適用していく事が、今回の「議員間討議」導入の一つの狙いともいえます。
また、下記②に至るためには、議会が この「発言者が誰か」のレッテル貼りを脱却している必要があるため、ここ数年の変化は自治体全体としても非常に望ましいものです。
導入の意義②
政策が生むメリット/デメリットを住民と広く共有
現在は「議員間討議」の試行期間中ですが、議案審査に限って言えば そもそも 論点を特に深掘りすべき議題が現れない限り、討議の申出自体がなかなか発生しない可能性はあります。
しかし、現代は少子高齢社会に伴う財源不足や 社会保障費の増、高度成長期に開発した公共施設の一斉老朽化問題をはじめ、自治体の現場においても これまで実施していた事業を取りやめたりといった「選択と集中」の場面が現れてきます(しかも、判断の確実性を図る事が難しい課題が増えていきます)。
議会には それら決断に際して 単純な賛成・反対の意見表明に留まる事なく、結論に至る前の段階で 論点をテーブルに挙げ、メリット/デメリットを住民に開示した上で 賛否を表す姿勢が より必要とされていくはずです。
その場面に備え 本制度を議会の装置として設置しておく事は極めて重要と考えておりますので、各議員合意のうえ準備に至った事について 各位に感謝を申し上げたいと思います。